見知らぬ屋根

今朝は、頭に直接響いてくるような金属音で目が覚めた。起きた瞬間は「ああ、歯医者にいる夢を見ていたんだな」と思ったが、完全に目が覚めてからもギョンギョンとその音は鳴り続けた。カーテンを、居酒屋ののれんをまくる要領で少し開けて、目下に青々と生い茂る芝生に視線を移そうとすると屋根があった。いつもなら芝生が見えるはずの場所に100円ショップに売ってる透明の下敷きのような色合いの屋根が見えた。

「そういえば昨日、おかんが自転車置き場を建てるのに工事があるようなことを言っていたな。」

ギョンギョン

「さて今日はなにをして一日過ごそうか。」

ギョンギョン

「・・・。」

ギョンギョン

何をそんなにギョンギョンすることがあるのだろうか。寝起きのまどろみから次第に意識がハッキリしてくると、ギョンギョンに起こされたという事実に無性に腹が立ってきた。

「このまま起きてしまっていいのだろうか。」

「それではギョンギョンに負けたことになるのではないか。」

「えい、こうなれば勝負だ。」

そうして再び布団をかぶると目を閉じた。しかしギョンギョンが攻撃の手を緩めることは無い。絶え間なくボクの鼓膜に「オキロ…オキロ…」と囁きかけてくる。

背に腹はかえられぬ。かくなる上はとボクはまくらを頭の上に乗せて耳をふさいだ。本来であればまくらと人間の主従関係は絶対だ。生まれながらにして、人はまくらの上に頭を乗せ、まくらはその下敷きにされる運命にある。その自然の摂理を覆してまでボクはギョンギョンに勝たねばならないと決心していた。

 

ギョンギョン。

ギョンギョン、ギョンギョン。

ギョンギョン、ギョンギョン、ギョンギョン。

ギョーンギョンギョンギョンギョンギョギョギョギョギョギョギョギョギョギョ!!!

 

ギョンギョンは本当の力を隠していたのだった。本気になったギョンギョンの安眠妨害には為す術無く、ボクは朝食を食べながら妙な敗北感を味わった。